恐怖のアンパンマン(2)

娘のかわいい仕草。
あくびが出ちゃったとき、口に手を当てて、
ハッとした顔で「あくび」と言う。
僕があくびをしても同じ仕草で教えてくれる。


その仕草が命令形になるとき。恐ろしい。


あれは夏の花火大会のときか。屋台で買った
アンパンマンのお面。部屋の模様替えで
出てきてしまった。


お面をちゃんと顔に付けろ、という支持が
「あくび」の命令形に含まれているのだ。
ちなみに、命令形の時は笑顔はなく、半分
泣きそうな怒ったような口調。


頭にちょこんと乗っけるだけではダメ。
口が隠れるまでちゃんと付けろってのが
「あくび」なのだ。


けど、このお面、目のところに穴は空いて
いるけれど、目と目の間隔が近すぎる。
片目でしか外が見れず、焦点が合わない。
そんなお面を少しでも外すと「あくび」と
注意されてしまう。


長い時間、焦点の合わないお面をしていたら
ぐるぐる目が回りそうになって、しばらく
目を閉じたりしていたけれど気分が悪く
なってきた。それでも止まらない「あくび」


絶対にこのお面はどこかに隠してやる。