ウシ君と娘


社員旅行の宴会でのダーツゲーム、景品で獲得したのは
パペットマペットのウシ君(ニセモノ)。
カエル君は別の人の手にいったので、ウシ君だけ連れて
帰ってきました。


ニセモノらしく、何故か後頭部にはチャックがあり、
電池をセットできるようになっていて、耳がスイッチに
なっているようだ。


家に帰り、さっそく娘に見せる。夕飯前の一眠りから
目を覚ましたばかりで少し迷惑そうだが、目が覚めて
くるに従って、次第にウシ君の存在に気付く。


どうやら電池を入れると、左耳のスイッチで録音ができ、
右耳のスイッチで再生できるようだ。
ようやく娘が「モウモウ」と言いし、興味を持ち始めた
頃を見計らって、録音の機能(推測)を試してみること
にした。
たぶん、録音だと思うのだが、ぶっつけ本番だ。


左耳を押す。ピッ。
「モー」(僕の声)


右耳を押す。
「モー」(意外にデカイ声)


「ビエェーーーン」


予想は的中。やはり録音機能だったようだが、
なんと娘はびっくりして泣き出してしまった。
慌てて娘を抱き上げるが、何がいけなかったのか。


あまりにベタな「モー」がいけなかたのか、
娘の予測を遥かに超えた機能に恐れをなしたのか。


その後、娘が落ち着きかけた頃に、奥さんの声で
「みうみう」と録音をして、右耳をピッ。


「ビエェーーーン」


全然ダメらしい。僕の声が原因でないようなので
ホッとしつつ、それでも原因が不明の大泣きだ。


あひるさんを見せると、「ガーガー」と喜んで
遊びだし、笑顔も戻ってきた。ようやく持ち直して
くれた頃、離れて置いてあるウシ君を指差して、
「モウモウ」。


おや、慣れたかな。音は鳴らさないように持って
来てみようとすると、口が歪みだし、目が涙目に
なって、また泣きそうになった。慌てて隠す。
僕の身体の後ろに隠した。


危ない危ない。なんとか泣かずにすんだ。
また「ガーガー」とか言って遊ぶが、ちょっと声が
震えて、泣きそうだったのが分かる。


しばらくして、また「モウモウ」と言いつつ、
僕の身体の後ろを覗き込もうとする。
気にはなっているらしい。大丈夫なの?


また「モウモウ」といって覗き込む。
後ろに隠しているのは分かっているというか、
それが気になるのかもしれない。


少し、チラッとウシ君の顔を見せる。
ヤバイ。
慌てて、遠くに隠してしまうことにした。


危ない危ない。泣きそうになるんじゃん。


一体なんなのでしょうか?