まったく逆効果

着ぐるみのキャラクター。
子どもに受け入れられるだろうと、良よかれと思って
用意したものだろう。


店頭にあるものよりも遥かにデカい顔をした不二家のペコちゃんが
ジャスコのなかを歩いていた。歩きかた自体はオズオズと遠慮がち、
目が合う人には手を振っているが、なにぶん有り得ないくらいに
大きな顔をしている。


「コワッ」


一目見て僕の口から思わず飛び出した言葉だ。


一緒に手をつないで歩いている娘はまだ気付いていない。
むしろ、気付かないほうが幸せなんじゃないだろうか。
少し前にもピターラビットの着ぐるみに怯えていた娘だ。


だが、その時はやってきた。店内のコーナーを曲がると
娘の視線にもペコちゃんが入ってくる。
何か喋りながら歩いていた娘にビクンと電気が走った。
つないだ手から可哀相なくらい驚いた様子が伝わってくる。
もちろん喋っていた言葉は飲み込んで後ずさり。


チラッと見えた娘の目には明らかに恐怖の色。不自然に
ペコちゃんから視線を外し、僕の影に隠れ固まって
しまった。


動こうとしない娘。あっちに逃げよう、そう誘って
その場を離れた娘は手を放そうとせず、足早に確実に
ペコちゃんから離れるルートを選ぶ。


ペコちゃんに近付くルートはかたくなに拒否。


「だって、おおきすぎ」
娘には恐怖の対象にしか映らなかったらしい。


その後、不二家の前で「小さいペコちゃんがいたよ」と
教えてあげると、一目見た娘は一瞬で目を逸らした。


どうやら嫌われてしまったようです。ペコちゃん。