修学旅行状態


夜中、寝ようとして布団に入ったら娘と目が合った。
どうやらベッドではなく下の布団で寝ているようだが
暗闇に目が馴染んできたと思ったらわずかな光の中で
娘の目の辺りが微かに輝いていた。


可愛い目。
とかそんな場合じゃない、娘の顔は横になった僕の
目の前、しかもこっちを向いていた。


ビックリして心臓が逆回転になるところだった。
けど動いてので見間違いかと思って、一度身をひいて
改めて覗きこんでみると、やはり目が開いている。


娘も目を凝らしてこちらを見ていたから動かなかった
ようだ。じきに娘もモゾモゾとしだした。


まあ、いい。娘も寝る態勢を崩しちゃいない。
このまま寝てしまおう。
何知らぬ顔で再び横になると、目の前の娘はまだ
こちらを覗いている。どうやら僕が起きているのか
どうかが半信半疑らしい。


ふいに手を伸ばしてきた。ペタペタと顔を触られる。
暗闇の中で形を確かめ、起きているのかを確かめる
ように。鼻を押されたり。


笑いが込み上げてくるが無抵抗でされるがままにして
いると、ウーと軽く呼び掛けるように小さな声を出す。


これには笑いが止まらなかった。起きてる?と探る
ような控え目な呼び声。
暗闇と静けさの中で、妙に笑える。


いいから寝なさい、と言いつつ笑ってしまったが、
そんなやりとりをしながら、いつの間にか二人とも
寝ていた。