自販機を前に


結局、風邪ぎみの奥さんは病院へ行ってみる
ことにした。
娘も今朝、ちょっと嫌な咳をしていたので、
ついでに連れて行くことに。


どうやら娘も風邪ぎみだったらしい、昨晩の
夜中に起きたのも、どうやら風邪ぎみなのも
原因だったようだ。連れてきて良かった。


それはそれとして、本人は至って元気である。
診察までの待ち時間が長かったので、近くの
ショッピングセンターで時間を潰すが、娘は
眠いくせに大はしゃぎ。


自動販売機が妙に気になったらしい。
ジュースの缶を指さしてぶつぶつ言っている。


自販機でジュースを買いにくる人がいる。
側でジッと見ている娘。睨むように見ている。
慣れた手つきで買っていった人が去った後、
すかさず駆け寄り、コインの投入口を突っき、
ボタンを押し、ジュースの取り出し口や
おつりの取り出し口を触っている。


おつりの取り出し口は少し恥ずかしいので
止めて欲しいが。


そこへ少し大きな男の子、娘は少し身を引く、
場所を譲るような感じになる。
男の子は少し離れたお母さんに向かって叫ぶ
「ぼく、これがいいー」


一番下の段のジュースを指さし、お母さんに
要求しているが、「後にして」と返事。
男の子も無理に要求はしていないが、しばらく
指をさしたまま。


いつのまにか娘は男の子の隣に行っていた。
男の子の指すジュースの3つ程となりのものを
ジュースではなく男の子の顔を見て差している。


気付かれていないのだが、ジッと睨むように
見ている。「わたちはコレ」と目で訴えている。


男の子もお母さんも気付いていないのが幸い。
こらこらと自販機からすかさず離す。しかし、
僕の腕からするりと抜け出す。


男の子は指を離しているが名残惜しそうにまだ
自販機の前に立ってお母さんを見ている。
そんな男の子の隣に、さっきと反対側の隣に
娘は駆け寄り、また男の子を見ながら、さっき
男の子が差していたジュースを指さしてる。
「これはどうちたでちゅか」そう言わんばかり。


そのまま男の子は気付かずお母さんのもとへ
駆けていった。娘はその後ろ姿を目で追っている。
ほんの短時間の出来事だったのだが、とても
笑えた。娘が。


このところ他人には躊躇しながらも関わろうと
する仕草を見せる。それもちょっと遠慮がちに。
特に小さい子は気になるようだ。


しかし、ここの自販機は背が低く作ってある。
コインの投入口から飲み物のボタンも低い。
お金を渡したら自分で買えるのも近いのだろうか。