2.2cmの自己主張

奥さんのお腹の中をエコーで撮った写真を見た。
かすかに確認することが出来た。
2.2cmと記されている。まだ、ほんの指先ほどの大きさだ。
しかし、そこには確かに生命が誕生している。
なんだか神秘的だ。
ちゃんと心音も確認できたそうだ。すごいね。


奥さんのここ数日の気分の悪さは、「つわり」というやつ
だったようだ。
いやいや、予定してなかっただけにびっくり。
余計に運命的というか授かり物という感覚がある。


奥さんは気分がすぐれないので安静にしてもらって、
静かに一人で乾杯。しみじみとビールで喉を潤す。



つわりに苦しんでいる奥さんには申し訳ないが、
小さな命の兆しに心を躍らせ、独り飲むビールも悪くない。



実は少しつわりで苦しむ奥さんが羨ましかったりする。
苦しむ姿を側で身守るのも辛いが、奥さんはもっと辛い
だろう。しかし既に小さな命と生活をしている感じだ。
いち早く子供を育てる難しさと喜びを体験している。
こんなとき男親は間接的だ。
エコーで写した写真などで実感は少しは得るが、やっぱり
間接的。まだ直接的な実感はない。


これは当然というか仕方ないことだが、奥さんはもう
僕より子供のほうに注意が多く向けられている気がする。
自分の身体に異変があるのだからそうだが、もしかしたら
これは、小さな命が必死で自己主張をしてるのだろうか?
お母さんの注意を自分に向ける為に。
そうだとしたら、かなわないな。
なんといっても内から直接にだから。


母親と子供の絆にくらべたら、男親はかやの外に置かれて
いるようにも思え、寂しさもあるが、しかし嬉しいことには
変わりない。
しばらくは奥さんはいつもと違う身体に不便な思いをする
だろうから、出来るだけの手助けをしていこうと決意を
新たに、今日も寝袋に潜り込む。