痛い思い


食器棚の下の段の扉にはテープが貼ってある。
引っ越し用のテープで、扉が開かないように止める
テープだ。


扉の下に小さな引き出しがあるのだが、横に一列
すべて飛び出ている。
リビングに置いてあるのがいけないのだが、娘は
家具を開けるのがブームのようだ。


扉のテープを取って開けるところを娘に見られたら
最後、娘の楽しみを奪って独り占めしていることを
責め立てられることになる。
それどころかテープのカラクリを見抜かれて、
もう少しでテープまで剥がされるところだった。
迂闊に扉を開けれない食器棚。しばらくは辛抱か。


リビングには更にタンスがある。背の低い洒落た
やつで、わが家ではチェストと呼ばれている。


ちょうど高さが3段しかなくて、娘がつかまって
立つには格好の高さ。


つかまって立ってた頃は自分が邪魔で、しかも、
取っ手はつまんで開けるものだったので、娘は
開けれずにいたのだが、今では遊び道具。


勢いよく開けたり閉めたりを繰り返している。
しかし、勢いよすぎて危ない。指が危険だ。
そう思って阻止すると、怒ってムキになって一層
開け閉めが激しくなる。


指を挟まぬように阻止して、何度僕の手が犠牲に
なったか。でも娘もだんだん上手になってきて、
引き出しを閉めるときは手のひらで押して、指は
ピンと伸ばして少し反らし、挟まらないように
器用に閉めるようになってきた。


最初は開いた引き出しをつかんで、そのまま押して
指ごと閉めようとしていたが、さては痛い思いを
したのは僕が見ていた数回より多いのかもしれない。


親が心配する以上に、こうして自然に身を持って
覚えていくのだろう。


とはいえ、まだね、よそ見をして挟んだり
下の引き出しに手を掛けたまま、上の引き出しを
開けて手が挟まるなんてこともあるので、見ている
親としては心臓に悪い。