真夜中の恐怖


お風呂に入る前に娘と一緒に寝てしまい、
1〜2間後に起きてiMacの前で少し遊び、
慌ててお風呂に入って寝る。そんな生活
パターンになりつつある。


このiMacに向かっている時間に日記でも
書けばいいのだが、一度寝ちゃってるので
頭がボーッと働かないこともしばしば。
結局はよく見るサイトなんかを見て回って
終わってしまう。


お風呂に入って寝なきゃなぁ、などと
思っていると。「ドン!」と大きな音。
iMacに向かっている背後のふすまが大きな
音を立てる。思わずビクッと身構える。


「ドン!」また聞こえる。必要以上に
ビックリして一人で恥ずかしくなりながら
推測するに、娘が寝返りをうってふすまに
体当たりをしているに違いない。
結構よくあることではあるがビックリした。


そういえば先週も同じく夜中に目が覚め、
少しiMacに向かっていた。2時半くらいでは
あったが、次の日は休みだったんで呑気に
iMacに向かっていると背後から不気味な音。


ブーン、コン、コン、コン。
ブーン、コン、コン、コン。


すぐに虫の羽音と分かるが、その後に固い
ものが何かにぶつかる音。
恐る恐る振り返る。音は背後の上のほう。


デカイ。夜中の心細さのせいか大きく見える。
なんか大きな虫が蛍光灯に突撃してはぶつかり
跳ね返されている。


ブーン、コン、コン、コン。
ブーン、コン、コン、コン。


妙に規則正しいリズムで繰り返される。
夜中の部屋には響く音。隣りの部屋で寝る
奥さんと娘が起きちゃいそうだ。


それより、この虫の正体は何だ?
昔、家の中に熊ん蜂が入ってきて
大騒ぎになった記憶がフラッシュバック。


違うときにだが、蜂に刺された記憶まで
ついでに甦る。刺激しないようにそーっと
かつ恐るべきスピードで蛍光灯から離れ、
対面キッチンのほうへ。キッチンの奥から
得体の知れない虫と向き合う。


目が悪いこともあるがよく見えない。
それよりうるさい。光に向かうようなので
蛍光灯を消してみた。


音は止んだ。と思ったら、しまった、
iMacがつけっぱなし。しばし間をおいた後、
今度はiMacのほうから音がする。


ブーン、コン、コン、コン。
ブーン、コン、コン、コン。


ちょっと半泣きになりつつ、蛍光灯を点ける。
また、蛍光灯に突進していく虫。


ブーン、コン、コン、コン。
ブーン、コン、コン、コン。


もう、勘弁して下さい。
というより、こいつをどうするか。
全部、電気を消して、お風呂に向かいたい
衝動に駆られつつ、明日の朝を考える。
家族の平和の為にもここで食い止めなきゃ。


とりあえず、天井近くの蛍光灯は届かない。
スーパーの袋を手に取りつつ、蜂だったら
どうしようか悩みつつ、蛍光灯を消す。
また虫はiMacへ。ここなら手は届くが、
どうやったら刺されずに捕獲できるか。


ブーン、コン、コン、コン。
ブーン、ブッ。


えっ?
音が消えた。iMacの灯だけの部屋に静寂が。
不気味すぎる。何が起きたのか。


iMacのモニターの下でうごめくものが。
しまった、下に入り込んじゃった。
蛍光灯を点ける。出て来れないでいる。
ある意味、捕獲できた。でも、そこから
どうする。恐くてキーボードも打てない。


しばし、キッチンにうずくまる。
考えろ、考えろ、考えろ。
泣きそうになりながら、家族を想い、
覚悟を決めてiMacに近づく。


そーっとスーパーの袋をモニターに口を
向けてセッティング。ダッシュで逃げる。
キッチンから隠れながら覗き込む。
蛍光灯を点けたり消したりを繰り返す。


モニターの下にはまっちゃった。虫も
出て来れないようだ。そのうち止まって
しまった。もしや居心地がよくて寝ちゃう
のではないだろうか。大変だ。


恐怖の中、もう一度袋をセッティング
し直しに。そのとき、袋を押さえていた
マウスを落とす。大きな音が部屋に。
やばい、いま奥さんが起きてきたら
これまた大変だ。


もはや最終手段。廊下に出て殺虫剤を探す。
見つからない。夜中なので派手に探すことも
出来ない。どうしたらいいんだろう。
仕方なく、目の前のファブリーズを掴む。


戻るとまだ虫はジッとしている。この隙に
敵の正体を探りにいく。どうやら蜂では
ない感じ。ホッと胸を撫で下ろす。けど、
なんだろう。カナブンかな。


いま思えばカナブンなら全然恐くない。
手で触ってもへっちゃら。けど、あの時は
どうにかしていた。それまでの恐怖で
心臓が縮み上がりきってしまっていた。


虫にファブリーズを吹きかけ、袋に追いやる。
さすがにファブリーズじゃ虫も慌てない。
途中でファブリーズを床に落とす。またもや
大きい音が。泣きそうだ、僕は。


何度も吹きかけるとさすがに嫌だったみたいで
ゆっくりと動き出す。なんとかスーパーの袋に
追いやる。袋に乗る。取っ手のところ。入って
くれない。意を決して袋を引っ張りなんとか
袋の取っ手ごと中に包み込む。


中でもぞもぞ動く。確かに入っている。中に。
やった。僕、やったよ。ベランダに出て、
袋ごと外に置いてくる。口を開け、出て行ける
ようにして。


部屋に戻る。残ったのはファブリーズと
興奮状態の自分だけだ。寝れそうにないが
風呂に入って布団に潜り込む。恐かった。
あの音が耳から離れない。


ブーン、コン、コン、コン。
ブーン、コン、コン、コン。