娘とイヌ

ワンって吠えるんじゃない?
「わん て いわない」


妙に力強く言い切る娘。言われたくない、そんな想いが
言葉に込められているようだった。
前回来たときに吠えられて恐い思いをしたことは、
ちゃんと覚えているようであった。


それでも近付こうとする娘。チャレンジャーである。
止めときゃいいのに、近くに行きたいらしい。


近付いていった。ワンちゃんも近付いてきたが吠えない。
娘の背中からホッとしたような安堵感が漂う。
やはり前回は娘の持っていたピンクの水筒に吠えたのか。


さっきまで奥さんが持っていた風船をいつの間にか
娘が持っている。風船の色はピンク。危険な匂いがする。
娘はイヌにむかって風船を差し出すように前に出す。



ワン!



案の定。懲りない娘である。