中村一義の“キャノンボール”


久しぶりにCDを買った。
前回はスガシカオの“Sugarless”だっただろうか。


“Sugarless”が今までのスガシカオのアルバムの中で、
最高の出来だったので、
スガシカオの最新シングル“青空/Cloudy”と迷ったが、
試聴盤で聴いた、中村一義の“キャノンボール”にした。



どうやら中村一義は、いま楽しそうだ。
音に充実感があらわれている。


キャノンボール”は8ビートの軽快なロックナンバー。
最新のアルバムである“ERA”からの流れで、
歌詞はどんどんシンプルになってきて、メッセージも
ストレートになってきたが、今回もシンプルであり、
曲も余分なものを削ぎ落とした作りだ。


デビューアルバムでは「宅録キング」ともよばれて
ほとんど全部のパートを自分でこなし、多重録音を
していたが、2ndで「バンド・サウンド」を手に入れ、
それを持って3rdでは宅録には戻ったが、
力強いサウンドを身に付けていた。
3rdアルバム“ERA”では、テンパった雰囲気があり、
それも魅力であったが、この“キャノンボール”では
力みがとれてサウンドに広がりが出てきている。


2ndで「バンド・サウンド」を手に入れて、
ここでは、本物の「バンド」を手に入れたようだ。


このバンド「百式」は同年代のメンバーで気が合うようで、
アルバムのレコーディングに入っているようだ。


(「百式」とは中村一義のことだから、間違いなく
ガンダムからのネーミングだろう・・・)



なぜか、この“キャノンボール”はU2を思い起こさせる。
もともと似ているところがあったが、
この曲は特にU2が頭に浮かんできた。


メッセージ色が強かったり、どこか青臭かったり、
へんに真面目であったりするところかな。


キャノンボール”での同じ歌詞のフレーズが
繰り返されるところ。
地声とファルセットをオクターブで重ねたり、
淡々とした一定したリズムの上で、静かに歌い出し、
後半にいくに従って歌い上げていく感じが、
U2の“With Or Without You”のようである。


「僕は死ぬように生きていたくはない」
「そこで愛が待つゆえに、僕は行く」
どこかこの青臭さもU2のようだ。



中村一義も雑誌のインタビューでU2の最新アルバム
である“All that you can't leave behind”について
素晴らしい作品だと発言していたのも目にしたから、
影響を受けていてもおかしくはない。


U2もまたこのアルバムで、前進をしている。
中村一義もこのシングルは一歩進んだ作品ではないだろうか。




シングルのカップリングにはライブ音源が入っている。
デビュー曲の“犬と猫”と最新アルバム“キャノンボール”だ。


演奏としては不安定な部分もあるが、中村一義にとっては
このライブが初めてまともなライブだ。
ひとえに経験不足だろう。
しかし、その割には声は出ている。ボーカリストとしては
かなり自信を付けているのではないだろうか。
“犬と猫”でそれを感じる。


残念なのは、中村一義に比べ、コーラスが弱いこと。
“犬と猫”でのファルセットのコーラスや、“キャノンボール
の地声に重ねるファルセットなどは、やはり荷が重い。
U2でいうエッジがいてくれるといいのだが・・・。


しかし独り多重録音だった“犬と猫”がバンド・サウンドで
演奏されるのは新鮮であるし。
キャノンボール”はこのバンドで演奏することを念頭に
作られた感じもある。


このライブは本人にとってよっぽど楽しかったとみえる。
今まで、「宗教ちっくななるのがイヤだ」とライブをほとんど
やらずにいたが、このバンドと初のツアーも行なうらしい。



いつ頃になるのだろうか。このバンド「百式」と録っている
というアルバムも楽しみである。