娘とケンカする


娘も成長をしてきた証拠ではあるが、
眠かったりして機嫌が悪い時には
手がつけられないことがある。


それほど多いわけではないのだが、
機嫌が悪いと、わざとこちらの困る
ことをやってのける。


とはいえ、普通のことではあるので
それほど大問題ではなくて、それでも
言うことを聞いて欲しいときはある。


困るのが風呂上がり。特に今は娘は
風邪を治している最中。なのに服を
着る前に振りほどいてあちこちへ。
しかも窓際の寒いところに向かって
いったり、脱力して服を着てくれない。


こちらも疲れているときはさすがに
キツいものがある。風邪が治り切って
おらず、鼻水が出てるのが気になるのに
全然言うことを聞いてくれないと、
さすがに泣きたくなってくる。


あまりにも「わざと」反抗しているので
ちょっと怒ってみた。実際にイライラと
してしまったのだが、溜め込んでも仕方が
ないので、ちょっと喧嘩だ。


上はなんとか着せたのだが、パジャマの
ズボンを履いてくれない。
「もう知らないよ!」とは言ってみたが、
効き目もあるわけでもなく、かといって
本当に放っておくわけにもいかない。


少し強い態度で、というより分かりやすい
ふくれっ面で娘に近づく。目は合わせない。


さすがに僕の様子が変わって、怒っている
ことに気付いたようだ。少し戸惑っている。
不安になったのかもしれない。


僕は分かりやすく怒り顔でズボンを履かせる。
しかし、娘もすんなりとは履かせてくれない。
それでも僕が怒っていることには戸惑いを
隠せない。明らかに不安そうだ。


近くに落ちていたハガキを手に取り、僕に
ハイっと渡してくる。


なぜにハガキなのかさっぱりだが、ご機嫌を
取りたいようだ。いつもの僕ならありがとう
といってニコニコで受け取るだろうが、今回は
そうはいかない。プンプンなのだ。


分かりやすく、子どものようにブンブンと
首を振る。髪の毛が乱れるほど。「いやだ」
と言いながら首をブンブン振ってみる。
顔は怒り顔だ。


娘はひるんだ、悲しそうな顔。もう一度気を
取り直してハイといった感じでハガキを差し
出してきた。


もちろん僕は受け取らない。ブンブンブン。


娘の顔は一気に崩れて泣きそうになっている。
けど、僕は「イヤだ」といってズボンを履かす。
さすがにちょっと娘は言うことを聞いてくれる。
しかし、その間もハガキを差しだしてくる。


少し気の毒になってきたが、一貫性が大事。
心は痛んだが、態度は変えず、ズボンを完全に
履かせ、スリーパーを着せる。


すでに娘は悲しくて取り乱し気味。
しかし、ようやく着替えは完成。娘も少しは
手伝ってくれた。そろそろ仲直りのときだ。


悲しそうに泣きかけている娘に「ちょうだい」
と手を出す。戸惑いながらハガキを僕に渡して
くれたので、喜んで受け取り、「わぁ凄い」と
ハガキを両面見て、またハイと娘に返す。


恐る恐る、娘はもう一度ハガキを渡してきた
ので、受け取り、またありがとうと喜んでみて、
娘に返すと、娘もハガキをまじまじと見ている。


ようやく安心したようで笑顔が戻ってくる。
そしたら、急に怒れてきたのだろうか。
無言で手に持ったハガキをポイって捨てた。


思わず笑いそうになったが、なかなか気が強い。
安心したら、きっと僕のさっきまでの態度に
怒れてきたんだ。こりゃ凄い。