テレビに映る


数日前のこと。


新しく開通した電車に乗って、慌てて会社へ
向かう通勤途中。電車が駅に着く。ここで
乗り換えをしなければ行けない。


乗り換えやすいように、階段の近くの車両に
あらかじめ乗っていたので、電車から降りると
階段は目の前、早足で階段へ向かっていく。


終着駅なので、乗っていた人はみんな降りて、
当然ながら階段には人が集中する。人の合間を
縫うように急ぎ足。乗り換え時間はギリギリ。
急ぎ足で向かっていくと、ちょうど次の電車が
やってくるのだ。


階段を下りようと差し掛かると、エスカレーター
で登ってきた人が目の前に。その人の背中が
見える。なんで後ろ向きに登ってくるのかと
思いきや、手にはマイク。後ろには大きなカメラを
抱えた人がいて、その人に向かって話している。


開通したばかりなので、実はカメラには慣れた。
あちこちにカメラがあったりする。しかし今回は
ちょっと違う。その男性、地元のローカル番組だが
テレビで見たことのあるアナウンサーだ。


「このようにサラリーマンがいっぱいですねぇ」
と彼が口にして手を伸ばした方向に僕がいた。
邪魔だったしとっさに避けたが、タイミング的には
僕だった。いかにもテレビで流れそうなセリフ。


あのアナウンサー、どこの局だったかなぁ。
考えながら歩いていたが思い出せない。


数日後。今日。新聞を見ていると「あおなみ線特集」。
直感的に「この番組だ」。いまやっている。
チャンネルを変えてしばらくすると特集が始まる。


あ、オレだ。


朝の急いだ時間。ちょっと迷惑そうな顔をしつつ、
ヘッドフォンをした、まさにサラリーマンの自分が
画面を横切る。


そのままCM。特集の予告みたいなもんだった。
CM開け。特集が始まった。また映った。さっきと
同じVTR。使いまわしで2回も映ってしまった。
いやいやいや。


しかし、朝だからだが冴えない顔をしている。
怪訝そうな顔をしてカメラをチラッと見やるから
なおさら。ウォークマンを聴いていたし。
まあ、ほんの一瞬なので、僕を知っている人でも
気付かないくらいなんですがね。