真っ白な口の周り


娘が鏡ごしに下から覗き込んでくる。
僕の隣りに立ち尽くし、真剣な顔で
そのまま見上げたり、鏡に映る僕の
顔を見上げたり。


よっぽど髭を剃っている姿に興味が
あるらしい。眼差しは真剣である。
一挙手一投足を見逃すまいという
勢いで睨むように見ている。


動作を真似るように、シェービング
クリームを塗るように手で口の周りを
撫でてみたりしている。


僕は電気カミソリを使っていないのだ。
ひげ剃りを間違っても手の届くところ
には置けない。真似されてしまう。


しかし、そういえば今朝、朝食のとき、
ベビーダノンというヨーグルトを自分で
食べていた娘。最初は上手にスプーンで
食べていたのに、そのうちに手で口の
周りに塗ったくっていた。


なんでも大人の真似をしたがるように
なってきたが、もしや、あの仕草は
ひげ剃りを真似ていたのだろうか。
まるでシェービング・クリームのように
口の周りが真っ白になっていたが。


そのうち、口の周りの無い髭を剃りだし
そうだ。何でも真似される。うかつな
ことは出来ないものだ。