納得のいかないキャッチコピー

“指輪を手にした者が世界を救う”


映画「ロード・オブ・ザ・リング」のキャッチコピーである。
このキャッチコピーをポスターで見たり、CMで耳にするたびに、
気持ちの悪い違和感を覚える。



キャッチコピーというのは、その商品や作品なんかを、
短い文章で的確に表現しなくてはならない。


短い文章で表現することは、簡単そうで実はかなり難しい。
映画に限らず、あらゆるところでキャッチコピーは見かけるが、
本当に巧く表現しているのは、ごく少ないだろうと思う。


間違いなく「ロード・オブ・ザ・リング」の場合は失敗だ。


このコピーだと、内容がかなり薄っぺらに見える。
巨大な悪を倒す唯一の“指輪”を見つけ、悪を倒し、平和が
訪れる。
そんな、ありきたりな単純なストーリーが待っていそうだ。


この物語りの最大の魅力は、確かに力を持つ“指輪”を
探索するのではなく、その“指輪”をできる限る使わずに、
この世から抹消する。という一見矛盾したところ。
また、抹消する運命に一番“指輪”が似合わない者が担って
しまい、文化も考え方も違う者、決して仲が良くないものもが
一緒に指輪を破壊する旅に出る、という矛盾。


この重く矛盾したストーリーを作者が考え、造り出した
ホビット”という愛すべき種族、その陽気で平和を好み、
食べることと飲むことが好きな種族の視点で物語が進み、
平和と友情の重みを感じるストーリーだ。



“指輪を手にした者が世界を救う”


それは、この映画を言い表わしてはいない。