アテ逃げられる

出張先、レンタカーを借りて営業廻りをしていた。
レンタカーに標準でカーナビが付いている。助かる。
コンビニで飲み物を買ってたら雨が降ってきた。
急いで駐車場の車の中に逃げ込み、次に行く場所を
カーナビで探していた。


ゴン、軽い衝撃とともに車が揺れる。え? 前を見ると
駐車場の中で前の車が下がってきて、ぶつかってる。
しかも、ぶつかってなお少し下がってきた。


乗ってる男性と目が合った気がした。ギアはバックから
ドライブに変わったようだった。やっと気付いたか。
参ったなぁ、忙しいのに、なんて思っていたら、車は
そのまま前に進み、ハンドルを切って平然と駐車場を
出て行こうとするじゃないか。


おいおいおいおい。


話し合おうかと車を降りた僕が間抜けに取り残されそう。
雨の中。思い違い? バンパーを見る。やはりぶつかってる。
傷が付いている。けっこう目立つ。


ヤロウ、逃げやがったな!


ヤツは呆れるくらいゆっくりと平然と駐車場の出口に
向かっている。血が騒ぐ。運転席に乗り込むと同時に
サイドブレーキを外し、アクセルを踏む。


ヤツは駐車場を出るところ、かなりの差をつけられた
こっちの車が少し動いたところで僕の頭は急激に冷える。
ブレーキを踏んで急停止。身を乗り出して目を凝らす。
なんとかナンバープレートの数字とその前の平仮名を読む。
携帯電話にメモる。


通り雨が止んできた。もう一度車を降りてバンパーを
見てみる。レンタカーだしなぁ、放ってはおけないなぁ。


携帯電話から゛110゛って掛かるんだろうか、なんて呑気に
考えながらプッシュ。おおっ、掛かった。


アテ逃げされたことを告げ、ナンバーを伝える。
車の色や逃げた方向などこと細かく聞かれ、記憶の
曖昧さを思い知る。


無線連絡し、犯人を探してくれる様子が聞こえる。
後ほど僕のところにも警察がくるから待っているよう
言われ、レンタカー屋と会社に連絡。


やってきた警察にまた細かく聞かれ、ちゃんと見て
携帯にメモった4桁のナンバーさえも、本当に合って
間違いないね、などと散々聞かれ、自信がなくなってくる。




しかし、その3時間後、警察から犯人を捕まえたとの
連絡がある。すごい。ナンバーで見つけれたようだ。
ちゃんと探してくれていたんですね。
無理して追いかけなくて良かった。


電話で相手本人とも電話で話すが19歳の男性。
ぶつかったことに気付いていなかったらしい。
全面的な非を認めている。


昨年も交差点で止まっていたら飛び出すぎて、
バックしてきた車にぶつかられる事故があったが
あれも10代の男の子だった。どうも若い子に衝突
される傾向があるようで参った。


経験も浅く、戸惑っている若い子をいじめたくもない。
警察からも厳重注意をしたので穏便に済ませてくれと
言われている。「ちゃんと保険に入ってる?」などと
心配してみたり。


まあ、無事に見つかって良かった。