消えた靴騒動

自分の足で歩かないと気がすまない時期を過ぎたのか、
娘はバギーやベビーカーの楽チンさを再発見したらしい。
自ら進んで乗る時がある。


買い物中にお店にあるベビーカーに乗せた。7ヵ月から
乗れる小さめのやつだが、だいぶ狭くなってきた。
買い物を終えて車まで戻るが、娘は狭い中にスッポリと
収まっている。楽そうだ。少し羨ましい。


奥さんが降ろすのにてこずっている。やはりベビーカーが
小さいようだ。足が引っ掛かっているらしい。


手伝いにいく。片足が引っ掛かっている。二人掛かりで
ようやく抜けたが、そのとき異常に気付く。先に抜けた
足の先に靴がない。靴を履いていない。


青ざめた。買ったばかりの靴だ。履いていない。
大慌てで帰ってきた道順を思い出していく。幸いにも
ベビーカーに乗せてから行ったところは限られている。
見つかりそうだ。そんな直感を抱きつつ、ベビーカーを
返しながら探しに行く。


娘と奥さんは車で待っててもらい、大急ぎで戻って行く。
こういうものは早ければ早いほど見つかりやすいだろう。


片方だけの靴。誰も持って行かないだろう。靴は水色で
結構目立つ。店員がすぐに見つけてくれている可能性も
高そうだ。


通った場所を下を睨み付けながら早足で過ぎ去って行く。
かなり怪しい人物だったのだろう。サービスカウンターに
聞こうか迷っている暇もなく、向こうから声を掛けられた。
どうかされましたか?


似たような靴の落とし物は届けられていないらしい。
落とし物の届け出をして見つかったら連絡してもらう
ようにお願いする。


だんだん不安になってきた。時間も経っていなかったので
見つかると思ったのだが、なかなか出てこない。
娘が売り物のソファーに座るっていうんで、最後に
靴を脱がせて、また履かせたのは僕だ。緩かったか。
ずずーんと責任ものし掛かってくる。


もう一周、通った場所を探してみるが、やはり無い。
重い気持ちで車に帰っていく。


なかったよ。そう声を掛けようとドアを開ける時に
何気に車の下を覗きこんだ。水色の靴。あった。
こんなとこにあった。途中、もしやとは思ったが、
本当にベビーカーから降ろす時に脱げたんだ。
あっさりと見つかって拍子が抜けた。


娘を気に入っているようで歩き易そうだったし、
兎にも角にも見つかって良かったが、へなへなへなー
て感じでした。